信念と思い込み 2007.09.28

全国に数百あると言われる創業支援施設の入居者の中には、安い家賃だけを目
的に入居していて、アドバイスやネットワークは不要だと言う起業者が少なく
ないと聞きます。

そういう人は「自分だけは事業に失敗するわけがない」「自分だけは成功でき
る」と根拠もなく思っているのだそうです。

自分には特別な実力があるから、安い家賃で資金に余裕ができるだけで(アド
バイスや人脈が無くても)必ず成長できる、と過信している施設入居者に共通
しているのは、

・他の起業者と違って自分だけは成功できる、成功できないのは環境のせい

・他の起業者よりも自分は実力も才能もある(だから他の低レベルな施設利用者
 と一緒にされては困る)

・自分は選ばれてこの施設に居てやっている(のだから、施設のルールよりも
 自分の都合が優先されて当たり前)

等と考えていることのようです?

そもそも、自分を特別で優秀だと思い込んでいるということは、自分で作った
ハードルが低い状態なのかもしれません。

現在本人としては10段階中の9とか10の評価にいるつもりなのですが、本当はそ
の上にさらに20ぐらいの評価段階があって、実際は30段階中の10、つまり低位
にいるのに本人だけ気が付かない、なんていうこともありえます。

とにかく自分だけ「特別」だと思い込んでいるわけですから、アドバイスもネッ
トワークも不要だというのです。
でも傍から見ていると、全然やるべきことができてないので、なかなか成功でき
ないのもあたりまえです。

しかし、こういう人は、自分は優秀だと思っていますから、上手く行かない理由
を環境やタイミング等に求めます。
展示会の集客が悪い、場所が悪い、天候が悪い、バイヤーが理解してくれない、
時期が悪い・・・等などです。

さらにはアドバイスを求めないのにアドバイスが無いのが悪いとか、周囲がサポ
ートしてくれなかったとか、無理やり理由をこじつけます。

それで、さらに腹立たしいことに、自分のことは棚にあげて、アチコチの批評
や悪口、無いものねだりを始めます。
(自分でできないことを批評するな、ということではありません。)

例えれば、さびれかけた商店街に店を構えるオーナーだとします。
今さら変えようも無いのにアーケードのデザインがダメだとか、行政が交通を
整備しないのが悪いとか、隣の店の雰囲気が悪い等など、自分の店が売れない
のは商店街のせいだとばかり文句を言います。
しかし、自分の店は掃除もしない、品揃えもダメなのに、自分の店を改善する
努力もしない、商店街をよくするための活動もしない。という状況の人です。

売れないなら、まず最初にするのは、自分の店を少しでもよくすること、じゃ
ないんでしょうか。

そのためには、真摯にアドバイスをもらうことも必要でしょう。
そもそもネットワークもアドバイスも自分に欠けているものを補うために必要な
ものです。

アドバイスは自分で気づいたことを教えてもらうのではなくて、気づかないこと
を教えてもらうものだし、ネットワークは自分にできないこと、足りないことを
補ってくれる相手を探す意味もあります。

足りないものを補えるから成長できるのではないでしょうか。
それを否定していたらどうなるのでしょう。

「自分だけは成功する」と、自分のことを特別視して、周囲をバカにすうるよ
うな創業者の周りには応援してくれる人がいなくなり、周囲からは、人が逃げ
ていきますから、いつの間にか孤立していたりするわけです。

そうするとビジネスでの相乗効果や広がりが生まれなくなるのです。


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■信念と思い込み

とは言っても起業家にとって最も重要でなのは「自分は成功する」という信念
だと言われています。

逆に、厄介なのが上記のような「自分だけは成功する」という根拠の無い思い
込みであり、両者はほとんど紙一重なのですが、実際の行動を見ていると違い
が見えてきます。

信念派は、成功するために着実に実力を付けていくという方法を取ります。
まずは身の丈にあったビジネスで小さく成功してから、次ステップに移ります。

例えば最初はTシャツ、カットソーだけで出発して、それが評価されると、
次に重衣料に取り掛かります。
少しずつビジネスの規模や、精度を高め、製造工場や取引先との関係作りも徐々
に学んでいきます。

例えば、バイクのレーサーも最初は自転車を覚え、それから50cc→125cc→250cc
→1000ccと徐々にクラスをあげていきます。
小排気量のバイクのカテゴリーで優秀な成績を得て、始めて次のステップに進め
るのです。

上のクラスに行けば、そこにはバックアップ体制のしっかりした大企業のチーム
が参戦しているので、より厳しい戦いが待っています。
自分の身の丈、実力にあったステップを登りながら、徐々にステージを高めてい
くことが遠回りに見えても、成功するためには効率的なのです。


しかし、盲信派というか思い込み派は、初めから背伸びして戦おうとします。

例えば有名なセレクトショップしか知らないから、そこを勝手に自分の戦う場所
と決めてしまいます。
そして「自分だけは成功する」という思い込みがあるので、最初から未熟な状
態のままで多額の投資をしてしまいます。徐々にステップアップするのではな
く、いきなり高い目標を掲げてしまうのです。

バイクのレース言えば、まだ小型バイクしか乗ったことが無いのに、いきなり
グランプリレースにでようとするようなものです。

大きな排気量のバイクは確かにスピードが出ますが、レーサーに求められる技
量は格段に高いものが要求されます。
有り余る馬力をコントロールできないと、小型のバイクをしっかり乗りこなす
よりも、遅くなってしまいます。

例えば、テーラードジャケットの作りをしっかり学んだわけでもないのに、い
きなり高級仕立に挑戦してしまうと、どこが良くて、どこが悪いかわかりません。
パターンのどこが破綻しているか、素材の選定はこれでいいのか、隠れた部分ま
で縫製はしっかりできているか、などバイヤーがチェックするポイントをデザイ
ナー側が判断できない、なんてことになります。

だいたいどのブランドも同じアイテムを何百、何千と商品化しています。
このような百戦錬磨の経験を積んだ相手に対して、経験値が圧倒的に欠けている
状態で戦いを挑んでも勝てると勘違いするような「自分だけは成功する」とい
う思い込みこそは危険だと思うわけです。

ちなみに「自分だけは成功する」と思い込んでいる人は、ビジネスの引き際を
判断できませんから、ずるずると投資して泥沼にはまり込むのだそうです。