ここでがんばれないのに、他で上手くいくわけがない 2006.06.01

先日とある会議に参加したときに「事業として見本市に参加するけれど、出展社がとても多いので、そこで目立つのは難しく、成果は期待できないと思う」というようなことを当事者が言っているのを聞いて、がっくりしました。
はじめからダメだと思って、あきらめムードで出展していては成果があがるはずがありません。出るだけお金の無駄です。

出るからには「何としてでも商談に結び付けて、成果を出す」という意気込みが必要なことは言うまでもありません。とにかく目的を達成しようと決めたなら、目立つための演出をしたり、その見本市に適した商品を出展するなどの工夫をしていけばいいのではないでしょうか。

出展する前から失敗したときの言い訳をしている、というのは、出展のために頑張らないと言っているようなものです。


さて、先日海外への輸出を促進しようというジェトロのセミナーにいってきた時にも、同じようなことを感じました。このセミナーはメゾンエオブジェ(パリ)やミラノサローネ等の見本市に日本から出展する人向けということで、欧州の見本市の概要から始まり、日本から出展した企業の紹介もありました。

講師からは、日本からの出展者のブースについてコメントがありましたが、そのポイントは日本での出展と全くと言っていいほど同じものでした。

 ・商品は絞り込んでブースの特長を出したほうが効果的
 ・事前のパブリシティによる集客も必要
 ・ものすごく価値ある商品や、高度な工芸品なのに安っぽいディスプレイで
  価値があるようには見えなくなっている
 ・商品の良さを引き出すための展示技術が足りない
 ・口で説明しても情報は十分伝わらない、ツールなどの準備が大事
等など厳しいコメントです。

日本の展示会では反応が悪いから、海外に出展する、というのはもうちょっとお金が無駄にならないように作戦を立ててからにしたほうがいいでしょう。

日本でしっかりプレゼンテーションができなくて成果が得られない出展社は、海外に行ってもやはり成果は得られないのです。

さらに、共通の価値観を持つ日本人にさえ価値が伝わらない商品では、海外ではさらに価値が伝わらないので、一層の工夫が必要なのは言うまでもありません。ということは日本でダメなら海外ではさらにダメだということです。

(逆に、日本で十分に商品力を高め、プレゼンテーションや接客のノウハウを身に着けたブランドなら海外に出てみるのもいいかもしれません。)


同じように、
地方でブランドを作っても売れないから、東京に行けば上手くいく。
ここではなく都心の原宿や青山に事務所を構えれば売れるようになる。
日本では自分の関心ある分野は学べないから、海外の学校で勉強してくる。
小さい展示会では成果がないから、さらに出展料が高い合同展に出てみる。
著名なセレクトショップで扱ってもらえないと売上げはあがらない。
自分の作っているアイテムは需要が少ないから、扱い品目を変えたほうがよい。

これらのことを言う人の中には、現在の自分の環境の中で「できることをやり尽くした」のでしょうか?
そうではないと思います。

成果が出ない理由をキチンと捉えなかったり、何となく漠然としたイメージでビジネスを考えているなど、現実をしっかり見ていないような気がします。

なぜ現実を見ていないかと言うと、これらの考え方の背景には「競合相手」のことがスッポリと抜けているのです。売れているところは、競争が激しいところです。

努力してその競争に勝ち残ったところが「売れている」ように見えるんです。
競合相手がどれほど苦労したかというプロセスを想像できないから、今の環境から逃げて、もっと良く見えるところに行きたくなるんです。

現在、努力や知恵やノウハウが足りなくて結果がでていないのに、さらに競争が激しいところに行っても、競走に勝てるでしょうか。難しいと思います。

今いるところで「できること、やるべきことをやり尽くして、獲得できる顧客は全て獲得する」という努力無しに、隣の芝生が青く見えるからと、なんとなく上手くいきそうなほうに、逃げ道を求めてもダメなんだろうと思います。

顧客が少ない地方のショップで鍛えられた販売員やブランドが都心に出て成功するというのは、都心以上に努力や工夫を求められて、既に地方でできることをやり尽くして、その結果都心のショップ以上に実力がついていたから、ではないでしょうか。