ブランド価値を伝える 2007.03.16

先月の装苑の秋山さんのセミナーでは、ブランドコンセプトと、プレス業務の重要性を再認識することになりました。

ブランド価値を創造することと、ブランド価値を伝えること、と言い換えてもいいかもしれません。

どちらも、感覚的に「なんとなく」行うこともできます。
「漠然と」「ふわふわと」と地につかないまま、ブランド活動をしている人も少なくないように感じます。

しかし、「なんとなく」カタチにしたものが、相手に伝わるでしょうか?
何となく好きだから作ってみたカタチ、何となく気に入った材料が手に入ったから使ってみたカタチ、何となく手が動いているうちにできてしまったカタチ、ブランドコンセプトが無くてもカタチを創ることはできます。

しかし、こんなふうになんとなく作ってしまって、自分でも説明できないブランドの価値や意味を、相手に汲み取ってもらえると考えるのは、ちょっと甘いのではないかしら、と思うのです。

(もちろん、何年も創り続けてコンセプトが固まってきて、すでに理屈で考える 段階を超えていて感性の赴くままに「何となく」創るものは別です)

セミナーの中で、紹介されたDMや資料、展示会でのブースなどどれにも共通しているのは、
デザイナーが「このテーマ面白いでしょ」とか
「このコダワリはどうですか」
「この商品はこんな世界から生まれたんです」
というように、情熱を持ってブランド価値を伝えようとしていることではないかと思います。

気持ちの押し売りをしろ、ということではありません。
   相手に感心を持ってもらうにはどうするか、
   もっと知りたくなるにはどうするか、
   好意を持ってもらうにはどうするか、
   会ってもらうにはどうするか、
等の目的を持って、価値を伝える方法を考えているということです。

ブランドを売り込むほうにとっては相手は一人です。でも、売り込まれるほうにとっては数百、数千分の1だったりします。(ちなみに昨年のセミナーで秋山さんのいたところには月にダンボール1から2箱分のDM等の資料が届くと言ってました)

売り込むほうは自分のことしか考えない場合が多いのですが、売り込まれるほうは、多くのブランドを見て、比較しています。

その多くの中から選んでもらうにはどうするか?と考えれば、どのぐらい工夫して、練り上げていくことが必要か、少しは分かるのではないでしょうか。

人並みのことをしていても気づいてもらえないし、かと言って、最低限の礼儀さえわきまえないのでは相手にしてもらえません。
どんなにいい商品を作っていても、関心を持ってもらえなければ、存在しないも同然です。


さて、秋山さんの言葉の中に
「本当に伝えたい気持ちがあるなら準備にも力をいれているはず」
「やるべきことをやってないで、売れないとは言ってほしくない」
というような内容がありました。

やるべきことをやってないで、展示会の集客がどうとか、バイヤーがどうとか、文句を言っているデザイナーも見受けられます。もちろん商品を作ることには一生懸命なのですが、その価値を十分に伝えるこ
とを軽く考えているのです。

「買ってもらえれば良い商品だということがわかるはず」とは言いますが、まだ買ってないお客様に良さが伝わらないと、最初の1個も手にとってもらえないのです。

ブランド価値を伝えることに「この程度やればいい」とか「皆このぐらいだから」という限度はありません。
納得するまでやる、伝わるまでやる、伝わっても続ける、というぐらいがいいのかもしれません。

装苑のニューカマー特集のバックナンバーを数年分見返してみました。今でも活躍しているブランドのデビュー当時が載っています。ビジュアルやいくつかの商品だけ見てもコンセプトがはっきり伝わってきます。
やっぱり伝えることって大事なのだと思います。