自立支援事業でアドバイスしていること 2005.05.12

今年3年目となる中小繊維製造事業者自立事業というのをご存知でしょうか?
川中産業といわれる製造業者が生き残りをかけて、下請け体質から脱却するために取り組む新たな事業を経済産業省(実施は中小機構)が支援するものです。

支援対象となっているのは、オリジナルの技術や、高い品質を誇り、「良い製品」を作ることができる実績を持った企業。それでも「自立」に向けて手を打たないと生き残れないので新事業にチャレンジするのです。

この自立支援事業ですが、実力のある企業が1社平均3000万円くらいかけて事業を実施するのですが、多くの企業が最初のプラン段階で、方針を誤ってしまうらしく苦戦してしまうのだそうです。そのため、事業をより効果的にすることを目的に、今年から事前アドバイスを行うことになりました。

私も急遽そのアドバイザーの末席に加わることになりました。(私以外のアドバイザーの皆さんは業界を代表するような凄い人達です。恐縮です。ちなみにアドバイスするときは、私と企業の社長の1対1で行います。)

先日そのアドバイス事業の終了報告会があり、そこで意見が交わされたのですが、それぞれがアドバイスした内容にはいくつかの共通点がありました。

1)その企業の強みは何か?特長は何か?を問い直すこと

2)その企業の強みや特長を生かすのには、今のプランがベストなのか?もっと価値を活かす売り方や商品は無いのか?

3)事業に具体性があるか? 小売や販売等知らない分野については計画が甘くなりがちです。本当に競争できるプランとして煮詰めているか?

4)作り手発想に陥り、購入する生活者の意識を無視していないか?本当にニーズ、ウオンツがあるのか?

5)既存の事業の相乗効果を生み出すことができるか?新事業が軌道に乗るまでどうやって経営を維持するのか?

等を聞いて事業プランの方向性を確認していきます。

アドバイザーの立場で、その企業の強みと事業プランとを聞けば、ある程度事業が成立するかどうかの判断ができます。(というか、できるような人達がアドバイザーとして選ばれているのでしょう。)

この話し合いの中で、最も役に立っているだろうと思われるのは、その企業の価値を生かす売り方や商品を大局的な視点でアドバイスすることです。
それぞれの企業は、実力や実績があり、「価値を創造する」ことができます。
しかし、生み出された価値が生活者に支持され、ビジネスになるためには、「価値を生かす」場所や方法が必要なのです。それをアドバイザーが一緒に考えたり、気づかせたりするのです。

例えば、優れた畜産家がすばらしく美味しいお肉を作れたとしても、それを活
かせる料理人(デザイナー)や、お肉のよさを活かす料理(商品企画)、その
料理を提供するお店(売場)、料理の特長を伝えるガイドやメニュー(販促)
等の要素が不可欠なのです。

その肉を一番活かせるのは、どこのレストランか、どんな料理方法か?という
ことは、実は作り手の立場からではなく、食べる人の立場から考えていかない
とわからないのかもしれません。だからアドバイスが必要なのです。

話を創業期のデザイナーに戻しますが、実力のある老舗企業が十分なお金をか
けても、新事業やブランドの立ち上げは苦戦します。社員の生活もかかってい
ますから、アドバイスを受ける社長も真剣です。熱心に喰らいついてきます。

まして、経験も実力もお金も不足している創業期のデザイナーが、社員の生活
を背負っている企業と競合しながら、市場に参入し、成功するのは至難の技と
言えるでしょう。

デザイナーに対して、脅したいとか、諦めろと言いたいわけではなく、ブラン
ドを育成するためには、実績や熱意ある社長たちに勝たないといけないよ、
といいたいのです。

経験や実力や資金力に勝てる「デザイナーの武器」は何か?
その答えは自分で考えないといけないのだと思うのです。