気がつかないと戦えない 2006.04.18

「合同展に出展しているけれど、思った程の反応が無い」と思う人は多いと思います。合同展自体の集客力が落ちているのだろうか・・・と理由を考えることもあるのではないでしょうか?でもその理由ってわからないものですよね。

ほとんどの独立系デザイナーは自分の商品についてネガティブな評価を聞くことって、あまり経験が無いのではないでしょうか?

無視されるか、褒められるかのどちらかだと思います。合同展に訪れたバイヤーでも、ショップに来たお客様でも、気に入らない商品は無視するし、気に入れば褒めてくれたり、買い付けたりしてくれます。

10人中9人が関心が無いとか、気に入らないという理由で無視していても、残りの1人が褒めてくれると、デザイナーが聞くことができたのは、「褒めた声」だけになります。

そうするとデザイナーは、自分の商品の評価は高いのだ、自分にはデザインの才能がある、と思い込むようになります。だから自分のデザインを理解しないのはバイヤーの見る目がないとか、力量不足だとか、合同展の集客が少ないから、と考えてしまうのも仕方ないことです。

その10人中1人だけでビジネスになっていれば、それでOKですし、褒める声が仕事のモチベーションを高めるので悪いということではありません。客観的に自分の評価を知ることが必要だということです。

その点、大手ブランドでは、デザインについて良い評価、悪い評価等がしっかり集まり客観的に判断ができる仕組みができています。お客様に一番近い場所にいる販売スタッフがデザイナーにシビアな意見を浴びせかけるブランドもあります。

デザイナーにとっては耳に痛い言葉ですが、その言葉がデザインを成長させてくれるのです。ただでさえ生産力、営業力、販売力が強い企業のデザイナーが日々切磋琢磨しているんです。いろいろ言われて「ちくしょー、くやしい」と思いながら「じゃあもっといいものを作って見返してやる」と怒りのパワー全開で仕事をするんです。

そのような企業と戦わなくてはいけないことに気がつかないといけないんです。

普段、自分のデザインを褒められた経験しかない人は、売れなくて「くやしい」と思うことがあまりないようです。売れないのはデザインを理解できないバイヤーがアホだからとか、消費者の購買力が落ちたからとか、色々売れない理由を考えてしまいます。でも的外れになる場合もあります。

では、どうしたら良いかと言えば、自分のブランドを無視するバイヤーに「何が欠けているか」を聞くことだと思います。ハンガーに掛かった服をチラ見してブースを黙って後にする人を捕まえて、「もっと売れる商品にしたいので、指摘をしてください」と食い下がってみてはどうでしょう。

もちろん、面と向かって改善点を指摘してくれるような、本当に親身になってくれる人は少ないと思います。でもやらないよりはましですね。
まぁそれは例えですが、そのぐらい自分のブランドを良くするためにしつこく食い下がる熱意が無いようでは、大手企業と戦えるわけはありません。
(大手企業の営業マンが体育会系で占められているのは、それができるからでもあるんですね。)


さて、世の中のファッションビジネス市場(お店)は、既存取引先で既に固まってしまっています。実力のある企業が、優秀なデザイナー、高品質低価格の縫製工場、小売店と密着した営業マンという陣営で戦っています。
小売店は、このような大手企業の商品を仕入れていれば、値ごろ感もブランド力もあるので安心です。
このような既存ブランドで仕入れ予算のほとんどが使われてしまいます。何が売れるかわからない市場環境だと余計に安心できるブランドを買いたくなり、仕入れが保守的になります。そうすると新規ブランドは導入されにくくなります。


しかし、いつでも同じ商品ばかりでは、売場が陳腐化してしまいますから、たまにはアクセントになる商品を仕入れてみようとか、売上げが好調だから品揃えの巾を広げようとか、新規店で大手企業からは商品提供を断られたお店などから、新規ブランドに声がかかるのです。しかしこの需要はあまり多くはありません。
この小さいパイを合同展の出展社で奪い合っているとも言えます。

大きな合同展に出ていると、その出展者の中での競争、というイメージになってしまいますが、本当の競争相手は「既に売場に置かれている商品」なんです。

その商品を追い出して、自分の商品を置いてもらわなくてはなりません。
この競争相手は、自分で気がつかないと見えてきません。
売場をしっかりリサーチして研究しないと、ライバルの姿もわかりません。

とくにデザインはシンプルで、シルエットの良さで勝負とか、縫製のクオリティで勝負という場合は、大手企業の得意分野と正面から戦うことになるので、厳しい戦いになることを覚悟してください。

逆に、大手ではできない、クラフト感覚とか、遊び心とか、一つのテーマをとことん追求というこだわりブランドのほうが勝てる可能性が高いと思うのです。

あくまで私の考え方ですから、それが全てではありませんが・・・。