アーティストもビジネスか? 2006.10.24

■アーティストもビジネス?
デザビレの入居対象をファッション分野に加え、デザイン、コンテンツ、およびデザイナー等を支援する業務にまで拡大しました。
ファッションだけではなく、名前の通りにデザイナー全てを対象にしているということです。

そこで、対象業種を考えるときにアーティスト(芸術家)をどうするか、という問題についても考えました。

よく「デザイナーはビジネスを目的にして、アーティストは芸術を目的にしていて営利を目的としていない」というような捉えられ方をするのですが、はたしてそうなのでしょうか?
ビジネス=お客様に支持してもらった結果と考えれば、芸術作品を作るアーティストの本来の目的もビジネスではないでしょうか。
ダビンチやミケランジェロ、狩野派等は時の権力者のお抱えで大金で芸術を創造していましたし、ピカソとかゴッホとかは作品が売れないことに苦しんでいましたし、今でも芸術の価値は作品の価格で評価されます。

ということは支持されること=売れること=ビジネスが芸術の評価であり、その評価を得るためにアーティストは切磋琢磨している、ということです。
ですからアーティストでも、ビジネスを成立させる事業を考えているならば、創業支援の対象になるのではないでしょうか。

しかし、自称アーティストという人の中には、「売れなくてもいい」と公言して憚らない人もいます。
(作品が売れないことへの言い訳なのかもしれませんが)

売れないということは、その作品が誰にも求められていないということです。
芸術が作品を通じて、人々に感動や満足や与えたり、所有欲を満たしたりするものであるなら、売れなくても言いということは、自己満足のための制作となりますから、芸術ではないのかもしれません。
自己満足だけでは、ビジネスにならないし生活もできません。

さらに芸術作品の購入者である上流階級、企業、お金に余裕がある個人に売れるものを作ろうとしたり、作品を求められるように自分の作品をブランド化するのは、かなりのマーケティング力を要するものだと思います。

作品を作るだけではなく、さらに脳みそを搾り出してブランド化のための知恵を絞り、そして足を棒にするほど走りまわって売り込むという苦労を強いられるかもしれません。

自称アーティストは、これらの売るための苦労から目を逸らして、好きなことだけしたり、面白いことをするのがアーティストだと考えているのかもしれません。

でも、そういうのはアーティストではなく「アマチュアの趣味」の領域から脱していないということではないでしょうか。

■技術かコンセプトか?
以前ある自称アーティストに、「どうすれば作品が売れるようになるか」と聞いたことがあります。彼は技術力を高めることを条件に挙げていました。
技術が高くなれば売れるようになる、というのですが、果たしてそうなのでしょうか?

たしかに日本では造形の美しさや、色の美しさなど作品自体の審美性を評価する傾向があるようですから、技術を高めれば、キレイな線やきれいな色が作れると考えるのも当然なのかもしれません。

しかし技術は手段であって目的ではありません。
芸術作品はコンセプトを提示することが目的ですから、技術を磨いても、表現する中身が無ければ意味がありません。

欧米の芸術マーケットでは歴史を踏まえた斬新なコンセプト提案というのものが評価されるそうです。
色塗りやデッサンの技術だけなら日本人は相当レベルが高いのに、海外マーケットで日本の作品が評価されないのは、欧米作家の作品のマネをしている=つまりコンセプトが希薄だからなのかもしれません。

これはファッションでも同様です。
カワクボレイやヤマモトヨウジがパリで評価されたのは、革新的な提案があったからで、単に技術力を評価されたわけではありません。(だと思います)

このあたりの事情はファッションブランドとアートは似ています。
技術よりもブランドコンセプトが重要だということです。

さて、創業支援という立場で言うとアーティストとしてきちんとマーケットを意識しているなら支援対象だし、自己満足だけを考えている自称アーティストなら趣味の延長ですから入居をご遠慮願うということになるかと思います。